企業や個人でできる「雷サージ」への対策とは?

夏の雷雨の季節、「雷が鳴っているから電子機器のコンセントを抜いた」という経験がある方もいるでしょう。

しかし、なぜ雷が鳴るとコンセントを抜く必要があるのか、その理由をきちんと説明できる方は意外と少ないかもしれません。

雷による電子機器への被害の多くは、「雷サージ」と呼ばれる現象によって引き起こされます。

この記事では、雷サージとは何か、どのような被害をもたらすのか、そして個人・企業それぞれの立場でできる対策について整理します。

引用:Unsplash

雷サージとは何か——雷が「電気の波」として伝わる仕組み

雷サージとは、落雷によって電力線や通信線などに瞬間的に発生する、異常に高い電圧・電流の波のことを指します。「サージ(surge)」という英語には「急上昇」「波が押し寄せる」という意味があります。

雷が落ちると、その周囲に膨大なエネルギーが放出されます。このエネルギーは、電力線・電話線・LANケーブルなどの導体を伝わって建物の中へと侵入し、接続されている機器に流れ込みます。

通常の家庭用電源は100Vで設計されていますが、雷サージによって発生する電圧は数万ボルトから、場合によっては数十万ボルトにも達することがあります。家電や精密機器がその電圧に耐えられないのは、想像に難くないでしょう。

重要なのは、雷が直接建物に落ちなくても被害が発生しうるという点です。近くの電柱や電線に落雷した場合でも、その電気的な影響が線路を通じて伝わってくる「誘導雷」と呼ばれる現象が起こります。「自分の家の近くには落ちていないから大丈夫」とは言い切れないのです。

雷サージはどんな被害をもたらすのか

雷サージによる被害は、大きく3つに分けて考えることができます。

まず「機器の故障・破損」です。パソコン、テレビ、スマートフォンの充電器、ルーターといった電子機器は、過大な電圧が加わると内部の回路が焼損します。外見上は異常がなくても内部が損傷していることもあり、しばらく経ってから動作不良が表面化するケースも少なくありません。

次に「データの消失」です。パソコンやサーバーが雷サージを受けると、稼働中のハードディスクやSSDが損傷し、保存されていたデータが読み取れなくなることがあります。業務データや顧客情報を扱う企業にとっては、機器の損害以上に深刻なリスクです。

そして「火災のリスク」です。落雷の規模によっては、電気系統への過負荷が発熱や発火につながることがあります。特に古い建物や電気設備が老朽化している場合には注意が必要です。

個人でできる対策

個人レベルでまず取り組みやすいのが、「雷が鳴り始めたらコンセントを抜く」という行動です。電源から物理的に切り離すことが、最も確実な方法です。ただし、雷は突然やってくるため、外出中には対応できないという現実もあります。

そこで有効なのが「雷サージ対応の電源タップ(サージプロテクター)」の導入です。この製品は、異常な電圧が加わった際にそのエネルギーを吸収・遮断する機能を持っています。すべての機器をコンセントから抜くことが難しい状況でも、ある程度の保護が期待できます。

ただし、サージプロテクターには「吸収できるエネルギーの限界値」があります。直撃雷のような極めて大きなサージには対応できない製品もあるため、製品選定の際には仕様を確認しておくことが重要です。

また、電力線だけでなく電話線やLANケーブルを通じてサージが侵入するケースもあるため、これらの回線にも対応したサージプロテクターを選ぶとより効果的です。

企業でできる対策

企業にとって、雷サージ対策はBCP(事業継続計画)の一環として捉えることが重要です。

まず検討したいのが「UPS(無停電電源装置)」の導入です。UPSは停電対策として知られていますが、サージ対策機能を備えた製品も多くあります。特にサーバーや重要な通信機器には、UPSを経由した電源供給が推奨されます。

建物レベルでの対策としては「避雷器(SPD:Surge Protective Device)」の設置があります。これは電気設備の引込口などに設置し、建物全体への雷サージの侵入を抑制するものです。電気工事を伴うため、専門業者への相談が必要ですが、特に精密機器が多い環境では効果的な対策です。

また、どれだけ機器を保護しても、万が一の被害を完全にゼロにすることはできません。定期的なデータバックアップと、バックアップ先の分散(クラウドストレージの活用など)は、雷サージに限らずあらゆるシステム障害に備える基本です。「機器が壊れても、データと業務は止めない」という設計思想が、企業の雷サージ対策の本質と言えるでしょう。

雷サージ、あなたの環境は備えられていますか?

雷サージは、自然現象と電子機器が交差する点で起きるリスクです。「今まで被害に遭ったことがない」という方も多いかもしれませんが、それは対策が効いていたのか、運が良かっただけなのか、確認する手段はありません。

自宅のパソコンやテレビに、サージプロテクターは接続されているでしょうか。職場のサーバーや通信機器には、適切な保護が施されているでしょうか。

テクノロジーへの依存度が高まるほど、自然現象がもたらすリスクの影響も大きくなります。雷サージへの備えは、その一つです。

大がかりな対策でなくてもよく、まずは電源タップを見直すだけでも、リスクを減らす一歩になります。

まとめ

雷サージとは、落雷によって電力線や通信線に生じる瞬間的な過電圧の波であり、電子機器の故障・データ消失・火災などのリスクをもたらします。

個人レベルではサージプロテクターの導入やコンセントを抜く習慣が有効であり、企業レベルではUPSや避雷器の設置、データバックアップの整備が重要です。

自然現象に対して完全な防御はありませんが、備えの有無が被害の大きさを左右します。

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