ISDNとは?かつて主流だった通信技術を振り返る

「ISDN」という言葉を、どこかで見聞きしたことがある方は多いかもしれません。一方で、それが実際にどのような技術で、何が画期的だったのかを説明できる人は、今ではかなり少なくなっているのではないでしょうか。

インターネットが当たり前に存在し、誰もが高速な通信を当然のように使える時代になった今だからこそ、かつて主流だった通信技術であるISDNを振り返ってみる価値があります。この記事では、ISDNとは何だったのか、なぜ当時画期的だったのか、そしてなぜ姿を消していったのかについて整理します。

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ISDNとは何か——「デジタル」だった電話線

ISDNとは、「Integrated Services Digital Network(サービス統合デジタル網)」の略称です。日本では、NTTが提供していた「INSネット」というサービス名で広く知られていました。

ISDNが登場する以前、一般家庭の電話線は「アナログ」でした。音声をそのまま電気信号の波形として伝える仕組みです。これに対してISDNは、電話線そのものを「デジタル」の仕組みに置き換えたという点が、根本的に異なります。音声もデータも、最初から0と1の信号としてやり取りされる回線だったのです。

「電話線がデジタルになる」と言われても、ピンとこない方もいるでしょう。当時のアナログ電話線でインターネットに接続する場合、コンピュータが持つデジタルのデータを、わざわざアナログの音声信号に変換し、電話線を通してから、また相手側でデジタルに戻すという作業が必要でした。この変換作業を担っていたのが「モデム」です。ISDNは、この変換作業そのものを不要にする、まったく新しい発想の回線だったといえます。

なぜISDNは画期的だったのか

ISDNが画期的だった点として、まず挙げられるのが「1本の電話線で、電話とデータ通信を同時に使えた」ことです。

アナログ電話線でインターネットに接続していた時代、回線は一つしか使えませんでした。つまり、誰かがインターネットに接続している間は、その家の電話は「話し中」になってしまい、電話をかけることもかかってくることもできなかったのです。「インターネットをしている間は電話が使えない」というのは、当時の家庭ではよくある悩みでした。

ISDNは、この問題を解決しました。回線の中に複数の通信路を持つ構造になっており、電話をかけながら同時にデータ通信を行うことができたのです。家族の誰かが電話で話している間に、別の人がインターネットに接続する、という今では当たり前の使い方が、ISDNによって初めて家庭レベルで実現したともいえます。

また、通信の安定性という点でも優れていました。デジタル信号としてやり取りされるため、アナログ時代特有の雑音による通信エラーが少なく、接続も比較的速く確立できました。当時「テレホーダイ」という深夜帯限定の通信料割引サービスが人気を博し、深夜にインターネットへ接続する人が増えた時代背景もありましたが、ISDNを使う家庭はそうした時間の制約からも、ある程度自由になれたのです。

ISDNの仕組みを少しだけ覗いてみる

ISDNの内部構造を厳密に理解する必要はありませんが、イメージとして知っておくと面白い仕組みがあります。

家庭向けのISDN(INSネット64)は、回線の中に「Bチャネル」と呼ばれる通信路を2本、「Dチャネル」と呼ばれる通信路を1本持っていました。Bチャネルはデータや音声そのものをやり取りするための通信路で、2本あることによって、先述の「電話とインターネットの同時利用」や、「2つの通信を同時に行う」といった使い方が可能になっていました。一方のDチャネルは、回線の接続・切断といった制御情報をやり取りするための、いわば「裏方」の通信路です。

このように、1本の回線の中に役割の異なる複数の通信路を持たせるという発想は、当時としては非常に先進的な設計でした。

ISDN、あなたは技術の「過渡期」をどう見ますか?

ISDNは、今となっては多くの人の生活から姿を消した技術です。しかし、それは「失敗した技術」だったわけではありません。アナログからデジタルへと移り変わる過渡期において、当時の制約の中で最善の解決策を提示した、確かな一歩だったといえます。

今、私たちが当然のように使っている光回線やモバイル通信も、いつかは同じように「過去の技術」として振り返られる日が来るのかもしれません。技術の進化のスピードを思えば、それは決して遠い未来の話ではないでしょう。

もし身近に、ISDNや「INSネット」という言葉に馴染みのある世代の方がいれば、当時どのような使い方をしていたのか、聞いてみるのも面白いかもしれません。技術の歴史を知ることは、今のテクノロジーがどのような土台の上に成り立っているのかを理解する、ささやかな手がかりになります。

まとめ

ISDNとは、電話線をデジタル化し、電話とデータ通信を1本の回線で同時に利用できるようにした通信技術です。Bチャネル・Dチャネルといった先進的な仕組みを備えていましたが、ブロードバンドの登場によってその役割を終えました。一時代を築いた技術として、振り返ってみる価値は今も十分にあります。

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